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言うにや及ぶ。まだヤセヌンティウスは火にかけられぬ。
最期のゼイ肉パワーを尽くして、メロシは走った。
メロシの頭は空っぽだ。胃も空っぽだ。何一つ入っていない。
ただ、わけのわからぬ大きな食欲に引きずられて走った。
日はゆらゆら地平線に没し、まさに目玉焼きのような黄色い太陽の最後の一片の残光も消えようとしたとき、メロシは猪のごとく刑場に突入した。
間に合った。
「待て。その人を焼いてはならぬ。メロシが帰ってきた。約束のとおり、今、帰ってきた。」
と、大声で刑場の群衆に向かって叫んだはずであったが、のどがつぶれてしゃがれた声がかすかにでたばかり、群衆は、一人として彼の到着に気がつかない。
(チュ●パチャ●プスよりのど飴のほうがよかったのか…)
既に、火刑のためのはりつけの柱が高々と立てられ、ボンレスハム用の縄を打たれても姿が似つかわしくない、味噌が塗りたくられたヤセヌンティウスは徐々につり上げられてゆく。
メロシはそれを目撃してみそ焼きとはいかがなものかと思ったが、食指が動く思いを抑え、群衆をはね飛ばす。
「わたしだ、料理人(コック)!食べるのは私だ、メロシだ!彼を暴君のメインディッシュにしたわたしは、ここにいる!」
と、かすれた声で精いっぱい叫びながら、ついにははりつけ台をぶっ壊し、味噌のヤセヌンティウスの両足にかじりついた。
みその味がした。
群衆はどよめいた。あっぱれ、と口々にわめいた。
ボンレスハム用の縄はほどかれたのである。
「ヤセヌンティウス。」
メロシは目に涙を浮かべて言った。
「君は……味噌より照り焼きのほうが美味しいと思う。」
ヤセヌンティウスはメロシのことをすべて理解した上で、即座にメロシの頬を殴った。
殴ってから、ほおがこけた顔で優しく微笑み、
「余計なお世話だ。しかし、君の変貌には驚いた。
どうしたんだ、その体は。三日のうちに何が起きたんだい。
つい君を殴ってしまってすまなかったが、君に殴られたらひとたまりもなさそうだ。勘弁してくれたまえ。」
何のことかと自分の体を、メロシは凝視した。
なんとスレンダーになっているではないか。彼には無駄な脂肪がないように見えた。
三日のうちに脂肪を燃焼できたのである。内臓脂肪はとれなかったかもしれないが。
この劇的な体型の変容に一番驚いたのはメロシ自身であった。
「ありがとう、友よ。」
メロシはヤセヌンティウスに抱きつき、共に味噌まみれになったが構わず抱きしめた。
筋力に変化はないようで、やはりヤセヌンティウスはつぶれそうになったが、メロシを抱き返した。
メロシは初めてヤセヌンティウスに抱かれた感触を味わった。
群衆の中からも、歔欷の声が聞こえた。
暴君デブニスは群衆の背後から二人のさまをまじまじと見つめていたが、やはりメロシの変貌には驚いたようで、自分の肉を見つめては情けなくなった。
やがてよたよたと二人に近づき、顔を赤らめて、こう言った。
「おまえらの友情は体型をも変えるのか。わしは食欲を失った。
おまえらはわしの食欲に勝ったのだ。カニバリズムとは決して美味なるものではない。
しっかり味をつけねばならぬのだ。生臭みがはげしいからの。
わしは人肉嗜食をやめよう。ダイエットをしなければならない。
まず脂肪吸引するから、それをくれてやろう。」
どっと群衆の間に、歓声が起こったが、
「王の脂身なんかいらねーだろ」というようなブーイングも聞こえた。
「万歳、ダイエット万歳。」
一人の少女が、緋のマントをメロシに捧げた。メロシはまごついた。
味噌まみれの友は気をきかせて教えてやった。
「メロシ、君は、かろうじて味噌で大事なところは隠せていても、ほぼ全裸じゃないか。
はやくそのマントを着るがいい。この娘さんは、メロシの裸体を皆に見られるのが、たまらなく悔しいのだ。」
勇者はひどく赤面した。
<完>
そういえば太宰治生誕100年ですね←関係ない(だざいって変換したら堕罪ってwww)
ありがとうございました。でも次回作とかなさそうなので…次はやーこさんのブログの歌詞に期待します☆